オンライン会議・イベントと音質


2020年のコロナ・パンデミック以降、「オンライン・ミーティング」や「オンライン飲み会」といった言葉を目にすることが増えましたね。

それまで打ち合わせといえば、まず集まること、実際に会う事が前提でしたから、オンライン、古い言い方をすれば「ビデオ会議」などというのは妥協的なもので、遠方にメンバーがいて集まる事が難しい場合などに仕方なくやるもの、という感じでした。

やむなく始めた「オンラインほにゃらら」ですが、実際にやってみて慣れてくると、「打ち合わせのためにわざわざ移動しなくてよい」「無駄話が減って効率的」「ある程度場所を問わないので参加率が上がる」など、良い面も見えて来て、必ずしもオンラインでなくとも良くなって来た2022年の中頃でも、「オンラインのままでいいかな」という向きもあるようです。

会議のみならず様々なイベントでオンライン化されたものも多く、もちろん、高速インターネット回線の普及、パソコンがなくてもスマホで参加できる、などのインフラや技術的な進歩のお陰もあって参加の敷居が下がり、コンサートやライブ、学校の行事などもオンライン開催、あるいはリアルとの併用開催というのが普通のことになって来ました。

便利な「オンライン」ですが、音に関わる身としては気になることもあります。


声が聞きにくい問題

それは、「声が聞き取りにくい」ことがある、いや結構多い、ということです。

良くあるのは、

・歪んでしまう

・同時に話すとダッキング(音を自動的に小さくする機能)が作動し声が消えてしまう

・会議室などで複数の人の声を一台のPCで集音すると、声が遠くて聞こえにくい

といったようなケースです。

会議などで複数人が一度に発声すれば聞こえにくいのはリアルでも同じですが、オンラインの場合は、機材の特性も関係しています。 それは、「入力できる信号レベル(音の大きさ)は限られている」と言う事です。 その限界を超えると、歪みが発生します。カラオケなどでも、マイクを口にくっつけて大声を出すと「ボバフアアア!!!」のように凄い音になりますが、これはマイクやカラオケ装置の許容入力値を超えたため声の波形が歪むからです。

これを解決するのは簡単で、パソコンの設定でマイクレベルを下げれば良いだけです。

ところが・・

確かにマイクの入力レベルを下げればその場の歪みは回避できますが、今度は小さい音が聞こえなくなってしまいます。 「そんなんボリュームあげたらええやん」と、スピーカーやヘッドホンのボリュームを上げると・・大きい声を出したときには「うるせえ!!」となるのです。

これは、音量変化の幅「ダイナミックレンジ」が大きいことの問題です。

人の声は(特に歌など)とてもダイナミックレンジが広いので、小さい声にマイクレベルを合わせると大きい音は大き過ぎ、大きい音に合わせると小さい声が小さすぎるのです。

そこで音響の世界では、「コンプレッサー・リミッター」という機材(今はソフトウェアであることも多い)を使って、このダイナミックレンジをある一定の幅に収めています。 詳細はまた別の機会に譲りますが、要は「大きい音を抑え、小さい音を上げる」装置です。 この処理をすることで、全体の音量が安定して、聞きやすい音にすることが出来ます。 (代わりに「表現力」みたいなものは若干減少します)

「やはり機材か・・」となるところですが、まあ、そうなんです(笑)

プロが高価な機材を使うのにはそれなりの理由があり、決して威張るためでも作業費を嵩増しするためでもありません。

しかし実は、パソコンやスマホにはこの「コンプ・リミッター」的なものが内蔵されており、またzoomやskypeなどのアプリにも「音量を自動で調節する」などの項目で実装されています。 ただ、その質があまり良くないので、過剰に音量を下げてしまったり、「下げ方」が雑だったりして、結局聞きにくい音になってしまう訳です。


ヘッドセットを使おう

最初に上げた問題のうち、3つ目の

・会議室などで複数の人の声を一台のPCで集音すると、声が遠くて聞こえにくい

問題は、単純にマイクと話者が離れてしまうことが原因なのですが、実はこれが、これまでの問題にも通ずる大切なポイントで、このマイクと話者が遠い・芯を外していることを「オフマイク」といいます。

オフマイクは様々な問題につながりますが、それには、「S/N比」(Sound/Noise比)というものが関係しています。 オフマイクだと声が小さくなってしまうのですが、声が小さいと言う事は、相対的に周りのノイズ(部屋の残響や空調、機材の作動音、屋外の環境音など)が大きくなることと同じであり、マイクはそれらを平等に(実際には少し声中心に)拾ってしまうため、ボリュームを上げるとそうした周りのノイズも上がってしまうのです。

つまりPCやマイクから離れて話すと、声が小さくなり、声が小さいためにソフトやPCが自動で音量を持ち上げる。 すると、なにやらノイジーな耳うるさい音になってしまう、ということなのです。 しかも外部の音の影響を受けやすいので、外部の意図しない音によって声がダッキングしてしまうという問題もあります。

また、PCのスピーカーを使用すると、出た音をマイクが拾ってしまう「フィードバック・ハウリング」の原因にもなります。

それを解決するには、「オンマイクにする」つまり、口元にマイクを近づけることです。 一番良いのは、コールセンターの方がしているような、「ヘッドセット型」のマイクを使うことです。 もちろん、本格的に音質を追求し予算もあるなら、より高音質の「コンデンサーマイク」をマイクスタンドに立てても結構ですが、顔の向きを変えたり、なにか作業をしながら話す、といった場合には、やはりヘッドセットが便利です。

今のところどちら様ともアフィリエイト契約をしていませんので特にこれを買えということはないのですが(笑)、「そんな新しい機材買う余裕ないよ」という方でも、スマホに付属のイヤホンマイクを使うだけでも随分違います。

オンマイクであればやたらにマイクレベルを突っ込まずとも声が聞きやすくなり、S/N比も改善し、音量を無用に上げないため歪みやダッキングもある程度抑制されます。

複数人で1つのPCを使う場合には、小さくてもよいのでミキサー(USB接続のミキサー付きオーディオインターフェイスなど)をつなぎ、そこに各々のマイクを集約すると良いのですが、実際にはPCを共用せず、各々がスマホで会議に参加するのが一番良いかもしれません。(イヤホンマイクで)

さらに、PCのスピーカーは大抵音が悪い(Appleは良いですが)ので、そもそもヘッドホン・イヤホンの方が聞き取りやすく、またハウリングも起きないということで、ぜひオンライン会議の際には「全員」イヤホンマイク、ヘッドセットにすると良いでしょう。


収録の音質改善

私が参加したことのある、学校のオンラインイベント(zoom参加)では、現地に出演者がいてそこからオンライン配信という形でしたが、運営が音響面で完全に素人さんであったため、それはそれはひどい音でした(苦笑) 何がまずかったかと言いますと・・

マイクは手持ちでしたのでオンマイクではあったのですが、そのマイクがまずかったのか、男性司会の低音がボンボン鳴ってしまい、また「吹かれ」(マイクに息が直撃すると鳴るボッという音)もひどく、とても聞き取りにくかった事がひとつ。

そしてたまにPCで流すムービーの音がまずかったのがひとつです。

ムービーは事前に作成されたものでしたが、とにかくBGMが大きくナレーションは小さく、しかも音が悪い。 そしてムービー以外の司会・現地進行の音との落差が大き過ぎて全体的に落ち着いて聞けない、という状態でした。

また某大学のオンライン文化祭で、軽音楽部の発表を見ていたのですが、これもまた大変に聞き苦しいものでした。 演奏の上手い下手に関わらず、機材と配信ミックスのまずさであれ程ひどい音になると、さすがに出演者たちが可哀想でした。

まあ音響を自前でやる場合は、どこもそんな感じではないかと思いますが・・

プロのオンラインライブ・コンサートを見ましたが、こちらはさすがにしっかりしておりました。 当たり前ですが。

軽音楽部の場合の問題点は、

・マイク収録の音(歌・ドラムなど)と、ライン収録の音(ベース、エレキギター、キーボードなど)の大きさが揃っていない。 ベースの低音が大きすぎる。

・ボーカルにコンプがかかっておらず、小さいと聞こえず、大きいと歪む。 楽器に埋もれてしまう。

・ドラムの音が大きすぎる、ルーム音が「鳴り」過ぎている

・各楽器・歌の音がバラバラのため、ひとつの音楽として成立していない

・配信用にミックスしていないので、PCだと歪んでしまう

などがありました。

いずれの問題も、音の入り口であるマイクの選択、そして音量をコントロールするコンプレッサー・リミッター、また音高の帯域ごとに音量を変えられるEQ(イコライザー)、そしてそれらのバランスを調整できるミキサーなどの機材を適切に使用することにより改善することが出来ます。

長くなりましたので細かくはまた回を改めますが、音響に関しては、予算云々という現実的な話はもちろんあるでしょうが、私が思うに一番の問題は、「音質の問題がどれほど内容の届き方を変えるか」をしっかり認識していないことだと思います。 せっかくの「良い会」が、なんだかなー、の会になってしまう。 大きな違いがあると思うのです。 参加者の方ははっきりと「音響の問題」と認識はしないかも知れません。 ですが、やはり「なんだかなー」と、少し残念な気持ちにはなるのです。 私が関わった中でも、音響に気を配ったイベントでは、もれなく「音が聞きやすかった」とお声を頂きます。 それは、裏をかえせば、いつもは意識していないが、聞き取りにくいなあ、とどこかで感じていたと言う事だと思うのです。

この機会にぜひ、配信の音質が良くなればイベントのクオリティがぐっと上がる、ということを覚えておいて頂ければと思います。 

今後、もう少し詳しい話も書いていければと思います。


“オンライン会議・イベントと音質” への2件のフィードバック

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